消費者保護のためのブロックチェーン活用
ブロックチェーン技術のより詳しい活用状況や調査を求める法案が、米国会に提出されたことがわかった。1日に下院議員3人の連名で提出された法案は、消費者保護の観点からの調査を求めている。
内容の概略は以下の通り:「商務長官に、連邦取引委員会と協議の上、ブロックチェーン技術の状況や消費者保護における利用状況等について調査を行い、報告書を議会に提出するよう指示する」。この法案の審議は、その後エネルギー・商業委員会に付託されている。
提出したのは、Brett Guthrie下院議員、Darren Soto下院議員、Doris Matsui下院議員。中でSoto議員は、仮想通貨規制の管轄は証券取引委員会(SEC)ではなく、商品先物取引委員会(CFTC)と連邦取引委員会(FTC)が行うべきだと主張したことで知られており、米国議会ブロックチェーン委員会の共同議長も務めている。
法案成立の可能性
しかし、米国議会で提出された法案が、実際に法律となるまでには、法案が付託された委員会での審議および承認、上院と下院両議会での審議および可決、そして大統領の署名(拒否権もある)という煩雑なプロセスを経なくてはならない。米国において法案が法律として制定される確率は3%から5%だと言われている。
これまでに提出された主なブロックチェーン法案のほとんどは、議会へ提案されたものの進展が無いようだ。
その中で、昨年9月、下院で可決されたのが、金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)にブロックチェーンやAIなどの革新技術の活用し業務改善ができるかどうかの調査を要請する法案「Advancing Innovation to Assist Law Enforcement Act」だ。金融犯罪に対抗するための手段として、革新技術の活用を促す効果が期待されている。
また、今年7月には、国防予算の大枠を決めるための国防権限法の修正案が可決され、「新興技術」の定義に分散型台帳技術が追加された。これを受けて「新興技術と安全保障ニーズ」運営委員会が実施する米国の技術的優位性を維持するための評価対象にブロックチェーン技術が含まれることになった。
しかし、昨年10月に習近平国家主席がブロックチェーン技術を国家戦略の一環とすると発表し、4月には次世代のインフラとしてブロックチェーン・プラットフォームBSNを立ち上げた中国の迅速な動きに比べると、民主主義の原則に則り国会が立法権を持つ米国は、規制整備の面で遅れをとっているように見受けられる。米国では民間企業のブロックチェーン開発活動がめざましいだけに、政府による柔軟な規制の枠組みづくりが、早急に求められている。